繁殖についての考え④                                                             交配・血縁と近親交配

実際の繁殖には、交配方法・獣医遺伝学の血縁と近親交配の考えも取り入れる必要があると考えています。

 

【交配方法】

純血猫の繁殖で大事な事は優秀な猫を増やすです。

環境的要因と遺伝的要因から改良を重ねます。

交配の方法には4種類あります。

①イン・ブリーディング(近親繁殖法)

親子・兄弟等の血縁が近い交配法。

遺伝子型のホモ化をはかる上では最も適した方法で、良い形質の遺伝が確実に行われます。

ただし、不良形質があると、劣勢遺伝するものもホモとなって表現型に出る事があります、三代・四代間の交配では比較的害は少ないのですが、これを漫然と繰り返すと、能力低下や奇形等の不良形質が現れてきます。

しかし、不良形質の摘発さえ十分に行うと、遺伝の確実な系統を確保するのに、最も適した繁殖法です。

交配のポイントは、同一の猫を三代以上にわたって交配しない事が大切です。

また、猫の場合、兄弟の交配は不良形質が表現型に出ると言われますが、かけ合わせる猫同士の血統上の血縁関係が濃いかどうかに影響されるもので、一概には言えません。

②ライン・ブリーディング(同系列繁殖)

父猫と母猫の系統が近親交配ほど血縁関係が近くないもの同士をかけ合わせる方法です。比較的子猫に表れる遺伝形質は安定しています。

③アウトクロス・ブリーディング(異形繁殖)

父猫と母猫の系統が全く異なるもの同士で交配する繁殖法です。

品質として特徴を維持しながら、健康で丈夫な子猫を作るに最適な方法です。しかし、生まれてくる子猫の形質が予測できず、不安定なのが難点です。

④ハイブリッド(異種繁殖)

基礎になる猫種に対して、全く別の猫を個配させる事で新しい猫種の作出」に利用されています。また「タイプの改良」が必要とされる場合に認められます。

マンチカンのように遺伝子プールがせまい(個体数が少ない)猫種は、どうしても血縁関係は濃くなってしまい、それに加え、短足は致死遺伝子の優性遺伝子が関与してしまいます。

そのため、マンチカンは異種交配が認められる猫となっています(現在はキャット協会により様々な考えがありますが)

 

【獣医遺伝学:血縁と近親交配】

猫の血縁と近親交配の関係は2個体間の血縁度で考えます。

父が同じでも兄弟とは呼ばず、母が同じ場合のみ兄妹みなします(父が同じ場合が全兄弟父が違う場合が半兄弟

この血縁度18.5%以上は特徴を固定する長所より、奇形・免疫不全等のリスクの方が危険になります。

①直系血縁の場合:(1/2)n乗

例)親子:1/2=50%

  2代(子と祖父母・全兄妹):1/2 ×1/2 =25%

  3代(子と曾祖父母):1/2 ×1/2 ×1/2 =12.5%

 ✳︎n=ある個体とその祖先との間の直径の家系経路の世代数

②傍系血縁の場合:(1/2)n+n'乗

例)半兄妹(父方親共通で母方親相違):1/2 ×1/2 ×1/2 =12.5%

 ✳︎n=共通祖先と最初の個体の間の世代数

  n' =共通祖先と2番目の個体との間の世代数

 

前回と今回の猫の遺伝の理論より、

まんちの樹の繁殖は、まずは

父系遺伝子交配で、弱体化を防ぎ効率よく良いタイプを

イン・ブリーディング比較的不良形質の害が少ないペアで遺伝の確実な系統を確保するのに最も適した繁殖法を(但し、同一猫を三代以上にわたって交配しないを厳守

血縁度18.5%以下の傍系血縁の半兄妹(父同じで母相違の同腹でない半兄妹)で近親交配の危険を避ける

でスタートしました。

 

なので、まんちの樹の繁殖の基本は

・スタンダードに最も近いタロパパ↓をエースとし、

・短足タロパパと交配できるママはタロパパとペアに、

・タロパパと近親すぎる子は血縁度18.5%以下を守れる他のパパとペアに

です。

必ず猫の遺伝ルールを考えた上でペアを組んでいます。

 

また、実際にブリーダーを経験してわかる事もありました。

①交配は年に1回と思っていた→メス猫は自然界では年に3回発情しますが、メスの発情は日照時間と気温に関係しているので、室内飼いは年に3回以上発情します。本能が強いメス猫は交配しなければ月に1度発情する事もあります。発情しているのに交配を我慢させると、それはそれで過度のストレスがかかります(発情中は食欲がなくなるので体重が減る・鳴きすぎて声が枯れる・ホルモンバランスが崩れる・マーキングする)

まんちの樹は出産後1回目の発情は必ず交配を我慢させています。発情2回目以降で体重と毛並みが戻っていた場合、獣医さんに交配問題なしを確認してから交配しています。すると、年に2回の交配サイクルになる事が普通です(帝王切開後はそのママ猫の体調考慮で、年に1回になる場合もありますが)

そのママ猫により発情サイクルも違いますし、出産数・産後の育児の仕方により体の戻りも違います(多頭出産なら次の交配は遅めになります。1頭出産・断乳が早いと次回発情は早くなりますが、まんちの樹は交配より育児重視なので嫁婿出しまでオッパイをあげてスキンシップを取っています。オッパイを長く飲んでいるベビーは情緒安定した良い性格になるからです)

②良いお嫁さんになかなか巡り会えない→マンチカンメスなら誰でもいいというわけにはいきません。まんちの樹のパパ猫の骨格サイズにあった・病気のない健康な・社会化期を愛情いっぱいに過ごして性格の良い・母ちゃん好みの子になかなか出会えないのです。

③スタンダートが大事と思っていた→最初はキャットショーに何回か足を運び、マンチカンのスタンダードを勉強しました。ショーブリーダーさんは皆さん勉強されてて尊敬する事は多かったですが、母ちゃんが目指す姿とは少し違っていました。まんちの樹の予約さんは、スタンダートなマンチカンより、とにかく健康で性格の良い飼いやすい猫の希望が多いからです(初回見学で実際のまんちの樹を見て①ショーに向いてない②交配向かない猫→まんちの樹の猫はマンチカンとしては顔が悪い&スタンダードより小さめサイズが欠点だと説明していますが、のびのび育って愛情いっぱいのまんちの樹の子がいいと本予約して下さるからです)

④スタンダートを外さない→マンチカンはどうしても他の猫種より難産・死産が多いです。特にマンチカンの血が濃い子・短足な子ほど難産が多く弱いです。それに比べ、異種交配は安産で、死産も少なく、何と言っても産まれたベビーが健康で強いです。

 

猫の遺伝基礎・交配方法・血縁と近親交配の理論を考慮し、

実際に妊娠管理・出産・育児・社会化期の教育を経験しながら、

「猫家族さんの希望に近い猫をお譲りする」を信念に

健康な性格の良いベビーを嫁婿出しできるよう努力しています

 

ブリーダーにより見解・考え方の違いがありますので

母ちゃんの考えが絶対に正しいとは思っていません。

ショーブリーダさんに比べれば邪道ブリーダーかもしれません。

でも、まんちの樹に産まれてくれたベビーへの愛情は誰にも負けない自信がありますビックリマーク

 

また、母ちゃんの考えは、先輩ブリーダからの伝授・書籍・論文・セミナー等&自分の経験を相互してのまんちの樹としての考えです。

公表されているネット引用はともかく、受講料を払って学んだセミナー内容・安価とは言えない獣医遺伝学・猫医学書による専門的な内容をこれ以上ここで公開するのは問題と思いますので、理論は今回で終わり。

次は、昨年から異種交配にスコティッシュストレートを選んだ理由を話していきます。

 

【まんちの樹が思うこと】は⑥まで続きます。

最後まで読んで間違っているなら、

感想・忠告・批判だけではなく、何がどう間違っているか理論的・具体的にまんちの樹ホームページのお問い合わせからメールで教えてください。

その意見は真摯に受け止め、違う形のブリーダーを目指す心の広さは持っています。

 

また、まんちの樹のブログコメント欄は

①猫が可愛い・猫を見ていて幸せの方だけが集まってほしい

②匿名で人のブログのコメント欄を使って批判するのは卑怯に感じる

の理由で、承認制にさせていただきました。

 

猫好きは考え方が違っても「産まれる子猫の健全性が保て、猫が健康でいてくれたら幸せ」は共通思考のはず。

母ちゃんはマンチカンが好きすぎてブリーダーになりましたが、好きだからと安易な気持ちでなく、ブリーダーとしての責任も理解し、母ちゃんなりに勉強したつもりです。