まんちの樹が思う事
①繁殖の基礎・短足について
②折耳について
③猫の遺伝基礎
④交配・血縁と近親交配
と話をしてきましたが、
実際の繁殖を経験して痛感したのは、理論と現実との違いです。
※以下、マンチカン=マンチ、スコティッシュフォールド=スコと省略します。
マンチカンブリーダーを始める前に先輩ブリーダーよりもらったアドバイスは
・短足×短足は危険(死産・奇形が出る可能性が高い)だから短足×長足で交配する。
・マンチ×マンチは短足×長足でも弱い猫になることがある。
・マンチ×異種交配の方が丈夫な猫になる。
でした。
それでも母ちゃんは、最初はスタンダート(キャットショーで優秀成績な猫)が大事と思っていたので
繁殖の基本は猫の遺伝学のセミナーを受けたり、本を参考にして
・マンチ短足×マンチ長足のペア
・インブリードは、父系遺伝子交配で、弱体化を招く危険性が低く 親の良い部分を引き継いでくれやすいタイプ
※父系遺伝子交配:パパ系が一緒の子同士の方が ママ系が一緒の子同士の交配より危険性が低い
父系遺伝子交配については、まんちの樹が思うこと〔繁殖についての考え③-猫の遺伝基礎〕を参照下さい)
・アウトブリードは、健康で丈夫な形質が予測できるタイプ
・親猫を その直系子孫の三代以内の子とは交配しない(同一猫を三代以上にわたって交配しない)
・傍系血縁の半兄妹で危険を避ける
※傍系血縁の半兄妹:父同じで母相違の同腹でない半兄妹。血縁度18.5%以下なので危険性が低い交配。
傍系血縁の半兄妹については、まんちの樹が思うこと〔繁殖についての考え④-交配・血縁と近親交配〕を参照下さい。
でスタートしましたが
実際のブリードでは、マンチの血統が濃い親同士の交配は難産・死産があり、悲しい思いを何回か経験してしまう結果に。
傍系血縁の半兄妹が近親交配となり難産・死産の理由になるのかと思って、血が全く繋がりないペアで交配してみてもマンチ同士の血統が濃いとやはり難産があり。
形成不全で産まれた子は嫁婿に出さずに、まんちの樹の家族にして大事に終生飼養するけど、
獣医さんと一緒に頑張っても頑張ってもどうしても虹の橋へ逝ってしまう子はいて。
本当に悲しくてブリーダをやめようかと思う事もありましたが、
猫親戚さんの「まんちの樹の猫で幸せもらった。これからもたくさんの猫希望さんに幸せを分けてあげてほしい」
の言葉に支えられ助けてもらっていました。
で、考えて考えて、勉強して、昨年から
「マンチカンスタンダードを守るより
安産&健康で性格の良い飼いやすいベビーを目指す」
に方針変更しました。
具体的変更は“ハイブリッド(異種交配)も取り入れる”です。
異種交配はうまく猫種を選べば、安産で死産も少なく、何と言っても産まれたベビーに好発遺伝疾患が出にくく丈夫なんです。
日本は多くのキャット協会があり、そのキャット協会により様々な考えがあります。
アジアキャットクラブは2017年1月からマンチ×マンチだけがマンチとしての血統登録に変更になったので
マンチ×指定猫種を認めている協会にも追加登録しました。
そこで、まんちの樹の今いるマンチのパートナーにはどのような猫が良いか?を考えました。
・遺伝子疾患少ない
・性格が良い
・体格体型がまんちの樹に合う(小さめ)
・家族にした時に飼いやすい
・産まれたベビーの顔が母ちゃん好み
を基に考慮しました。
猫種により各々かかりやすい遺伝子疾患(好発疾患)があります。
猫種による好発疾患→http://www.pet-hospital.org/cat-006.html#17
(参照:日本ベェツグループ 小宮山典寛先生より)
マンチの好発疾患は、胸が平ら(漏斗胸)・軟骨形成不全・ヘルニアと少なく、太らせなければわりと健康的な猫。
性格は好奇心旺盛で、明るく優しく運動神経が良く、シークレットキャット(鳴き声大きくない)なので
猫初心者さん・一人暮らしさん・多頭飼いさんにも飼いやすく愛らしい猫。
このマンチの性格はそのまま遺伝させたい。
どの猫種にもそれぞれの猫種の良さがあります。
まんちの樹でペアにする場合だけを考えた あくまで母ちゃんの個人的見解です。
・日本猫ミックス:丈夫だけど、ブリーダーの親猫としてはどんな遺伝疾患が潜んでいるか不明なのでパス。
・ペルシャ:毛並みは良いけど、好発疾患が多い&毛が細くマンチ長毛より手入れが大変なのでパス。
・アメリカンショートヘア:健康的・顔の形は良いけど、性格がマンチよりやんちゃ系なのでパス。
・ブリティッシュショートヘア:顔の形・性格は良いけど、骨格がしっかりでサイズ的にまんちの樹の猫とは合わないのでパス。
・スコティッシュフォールド(折耳):性格・体格は良いけど、折耳の骨軟骨異形成症があるからパス。
・アメリカンカール:性格は良いけど、反り返った耳が母ちゃん好みでないからパス。
・スフィンクス:お手入れは良いけど、毛がないのが母ちゃん好みでないからパス。
・セルカーレックス:性格は良いけど、巻き毛が母ちゃん好みでないからパス。
・ラパーマ:健康と性格は良いけど、カール毛が母ちゃん好みでないからパス。
・アビシニアン:性格は良いけど、野性感がまんちの樹と違うのでパス。
・エジプシャンマウ:性格が繊細で猫らしいけど、多頭飼いに向かないのでパス。
・オシキャット:ワイルドでシャープな目で猫らしいけど、母ちゃん好みでないからパス。
・ロシアンブルー:シークレットは良いけど、多頭飼いに向かないのでパス。
・シンガプーラ:甘えん坊で良いけど、マンチよりサイズが小さいのでパス。
・ソマリ:性格は良いけど、マンチより骨格がスリムなのでパス。
・トンキニーズ:性格は良いけど、天真爛漫で元気すぎるからパス。
・ベンガル:性格はで良いけど、ヒョウ柄が母ちゃん好みでないからパス。
etc・・・
で、最終的に母ちゃんが選んだのが3猫種のママ。
①スコテッシュストレート(立耳)→骨軟骨異形成症の危険がほぼない三角形の耳で、
・スコテッシュストレート×スコテッシュストレートのママ
・スコ×アメリカンショートヘアのママ
・スコ×ブリテッシュショートヘアのママ
・シングルフォールド耳のスコ×スコティッシュストレートのママ
サイズが小さめで、危険な好発遺伝の多発性腎嚢胞&肥大性心筋症の遺伝子検査異常なしタイプ
※スコの立耳なら全てOKというものではありません。フィールド因子検査(折耳因子の有無を調べる検査)で、見た目だけでなく折耳Fd遺伝子を持っていないを確認する事も危険回避に繋がります。
選んだ理由は、マンチ×スコティッシュストレート(立耳)のベビーは、マンチと同じくらい飼いやすい猫になり、
ベビー血統書はマンチ×スコテッシュフォールドストレートイヤー(SFSE)でマンチカン登録できる協会があるから。
②ミヌエット→マンチ×ペルシャのママでなく、マンチ×ミヌエットのママ(ペルシャの好発遺伝を50 %薄めた)
サイズが小さめで、危険な多発性腎嚢胞&肥大性心筋症の遺伝子検査異常なしタイプ
③ミックス→スコ × チンチラのママ
サイズが小さめで、危険な多発性腎嚢胞&肥大性心筋症の遺伝子検査異常なしタイプ
②と③を選んだ理由は一緒で、マンチ長毛より柔らかく優雅な毛並みで、マンチと同じくらい室内で飼いやすい猫になり、
ベビー血統書はマンチ×ミヌエット・マンチ×ミックスでマンチカン登録できる協会があるから。
実際、異種交配で出産したママは
マンチ同士に比べてびっくりするほど安産で、健康なベビーを産んでくれてます
また、母ちゃんは何回も書いていますが、
短足マンチ×折耳スコの交配は反対だし、今までもしたことはありません。
ベビーに突然変異である短足マンチのヘルニア×奇形である折耳スコの骨軟骨異形成症の二重苦の危険性があるからです。
(折耳については、まんちの樹が思うこと〔繁殖についての考え②-折耳について〕を参照下さい)
でも、猫予約さんの中にはどうしても短足折耳の希望が入ってきますので、
まんちの樹で危険因子をできるだけ取り除いた交配をしようと思いました。
“猫家族さんの希望に近い健康な性格の良いベビーを嫁婿出しする”
がまんちの樹の信念だからです。
それもあって、危険でない短足折耳マンチカンは両親限定があるので、産まれる確率が少なく
今までにまんちの樹から産まれた短足折耳マンチは4匹(1匹はメロタン)だけですが、
4匹とも骨軟骨異形成症にならず、みんな元気に幸せに過ごしてくれています。
パッと見た目では
スコマンチ(折耳スコ×短足マンチを交配した猫)と
短足折耳マンチ(長足折耳マンチ×短足マンチ)
の違いはわかりません。
短足折耳を選ぶ時は両親だけでなく、祖父母まで確認することをお勧めします。
まんちの樹では、ベビーを選ぶときに、祖先(血統)の説明をしています。
その猫種の長所短所を知って、理解していただいてから、家族に迎えてもらいます。
ブリーダーにより見解・考え方の違いがありますので
母ちゃんの考えを受け入れられない方もおられると思います。
(ショーブリーダさんに比べれば母ちゃんは邪道ブリーダーかもしれません)
でも、安産&健康で性格の良い飼いやすいベビーを目指す事は間違いはないと信じています。
母ちゃんは「産まれた子猫の健全性が保て、猫が健康でいてくれたら幸せ」ですから
まんちの樹の猫達&産まれてきてくれたベビーへの愛情は誰にも負けない自信がありますから